大林恭子氏からのメッセージ
映画制作会社PSCの代表取締役であり、長きに渡り大林作品の
プロデューサーを務め、公私ともに大林宣彦監督の最高のパートナーである
ご夫人の大林恭子氏から、メッセージが届きました。
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この度、監督は、次回作のロケハンに出かけました。
連日連夜、映画の夢の中、撮影現場にいるらしい監督は元気な声で
「ヨーイ、スタート。カット。オーケー。皆、お疲れさん、ありがとう」。
毎晩その楽しそうな声に私は目を覚まし、「お疲れさま、ありがとう」と
答えていました。数日前、真夜中に講演らしきお話をしていました。
そんな中「岩井君、手塚君、犬童君、塚本君たちが映画をつないで
平和な世の中に……」と、とぎれとぎれ聞こえてくる言葉、いつもと
変わらない最後の言葉「ありがとう」。そして、監督が繰り返した
「皆さん、ありがとう」を監督の遺言としてお伝え致します。
私との63年間の日々は、文学と音楽と映画の日々。いつも監督の
口癖は「眠るのは死んでから充分眠れるのだから眠るなんて勿体ない」
と本当に眠りませんでした。今頃、ロケハンの途中の天国村で、
黒澤明監督や本多猪四郎監督、立川談志さん、高畑勲監督、和田誠さん
にお会いして、映画談義が尽きることなく、やっぱり眠っていないのではと思います。
まだまだあふれる才能の持ち主、彼にあと三倍の映画の時間をあげたかった。
大林作品を愛して下さったすべての人に監督の「ありがとう」をお伝えしたく存じます。
「ありがとう」の言葉に、毎晩、私からも監督に「ありがとう、愛してる」と真夜中の涙。
すると「お休み……」と返事が…。
今頃ロケハンで未知なる道を見つけてくれていることと思います。
2020年4月14日 大林恭子
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お知らせ
4月10日(金)19時23分、大林宣彦監督がご逝去されました。
肺がんと診断され、余命の宣告を受けたのは、2016年8月。
転移を繰り返すがんと闘いながら、みずからの命を削って、
平和をたぐり寄せる映画を完成させた『海辺の映画館?キネマの玉手箱』。
本作は、当初4月10日(金)の公開を予定していましたが、
新型コロナウィルス感染拡大状況ならびに新型コロナウィルス感染症対策本部に
おいて示された方針等に鑑み、公開が延期となっておりました。
大林監督は、公開を迎えるその日まで、ご病気と闘われていました。
映画を心より愛し、撮り続けた大林監督、本当にお疲れ様でした。
謹んでご冥福をお祈りします。